なぜ最近のバラエティは「散歩・食べ歩き企画」が増えたのか?番組事例から見るテレビの変化

エンタメの仕組み・背景解説

近年のテレビ番組表を見ると、街歩きやグルメ紹介を軸にしたバラエティが数多く並んでいます。

例えば、
有吉くんの正直さんぽ
モヤモヤさまぁ〜ず2
出川哲朗の充電させてもらえませんか?など、
長年続く番組の多くが“街ブラ”や“ロケ中心”の構成です。

かつては大掛かりなセットやドッキリ、大人数出演のスタジオ企画が主流でした。
それに比べると、現在は比較的シンプルな構成の番組が増えています。

なぜこのジャンルはここまで増え、そして定着しているのでしょうか。
背景を構造的に整理してみます。

理由① 制作コストと継続性のバランス

テレビ制作では、予算と継続性が常に課題になります。

大規模なスタジオバラエティは、
セット制作費や出演者数の多さによる人件費が大きくなりがちです。

一方、散歩・食べ歩き企画は比較的コンパクトな体制で制作できます。

・出演者は少人数
・ロケ中心で大掛かりなセットが不要
・編集構成がシンプル

例えばモヤモヤさまぁ〜ず2は、
街を歩きながら偶然性を楽しむスタイルで、長期シリーズとして定着しています。

もちろんロケ費用はかかりますが、全体としてはコストを抑えやすい傾向があります。

テレビ広告市場が伸び悩む中、
“安定して制作できるフォーマット”は編成上のメリットが大きいのです。

理由② 視聴率より「安定感」が重視される時代

かつては瞬間的な高視聴率を狙う番組が多くありました。
しかし現在は、録画視聴や配信視聴が一般化し、視聴スタイルが分散しています。

そのため、瞬間的な爆発力よりも
「習慣的に見られる番組」が価値を持つようになりました。

散歩・食べ歩き企画は、
強い緊張感や対立構造が少なく、リラックスして視聴できます。

有吉くんの正直さんぽのように、
会話と街の雰囲気を楽しむ番組は“ながら見”とも相性が良い。

結果として、安定した視聴層を確保しやすいジャンルになっています。

理由③ 地域連携とスポンサー相性

街ブラやグルメ企画は、地域紹介という側面も持ちます。

商店街や観光地、飲食店の紹介は、
地域活性やスポンサー展開とも親和性があります。

例えば出川哲朗の充電させてもらえませんか?では、
地方ロケを通じて観光地が紹介される構造になっています。

過激な演出に比べて炎上リスクが低く、
スポンサーにとっても比較的安心できるフォーマットです。

広告市場が厳しくなる中、
“リスク管理しやすい企画”は編成上の強みになります。

理由④ デジタルとの相性

散歩やグルメ企画は、
番組放送後の活用もしやすいという特徴があります。

・紹介店舗の情報が検索されやすい
・SNSで短尺動画に切り出しやすい
・配信アーカイブでも視聴されやすい

特にグルメ情報は検索ニーズが高く、
テレビとデジタルの連動がしやすいジャンルです。

単なる放送番組ではなく、
“メディア横断型コンテンツ”として展開できる点も増加要因のひとつでしょう。

理由④ リスク管理のしやすさ

近年のテレビ制作では、炎上リスクへの配慮も欠かせません。

過激なドッキリや強い演出は、
SNS上で批判を受ける可能性があります。

その点、散歩や食べ歩き企画は
構造的にトラブルが起きにくいジャンルです。

地域紹介や飲食店訪問は、
基本的にポジティブな内容になりやすい。

結果として、スポンサーにとっても安心感のある企画になります。

本当に“ネタ切れ”なのか

一部では「企画のマンネリ化」と指摘されることもあります。
しかし、実際には“安定収益モデルへの移行”と見る方が自然です。

テレビは娯楽であると同時に、
広告ビジネスでもあります。

視聴率の急落リスクを避け、
制作費を抑えながら一定の数字を取れるフォーマットは、
編成上きわめて合理的です。

散歩・食べ歩き企画の増加は、
テレビ業界の守りの姿勢というより、
市場環境に適応した結果といえるでしょう。

まとめ:テレビは“安心して続けられる形”へ

散歩・食べ歩き企画の増加は、
単なるネタ切れではなく、テレビ業界の合理的な選択と考えられます。

制作コスト、視聴スタイルの変化、スポンサー事情、デジタル展開。
これらを総合すると、安定性の高いロケ型番組が選ばれやすいのは自然な流れです。

今後もテレビは、大きな刺激よりも“安心して続けられるフォーマット”を重視していく可能性があります。

番組を見るときに、その裏にある編成戦略を意識してみると、
テレビの変化がより立体的に見えてくるでしょう。