世界選手権3連覇という偉業を成し遂げ、長く女子フィギュア界のトップに立ち続けているのが、坂本花織選手です。
2000年4月9日生まれ、兵庫県神戸市出身。
平昌五輪6位、北京五輪銅メダル。さらに2021–22、2022–23、2023–24シーズンの世界選手権で優勝し、世界女王として3連覇を達成しました。
なぜ坂本選手は、これほど安定して高い点を出し続けられるのでしょうか。
なぜ高い点が出るのか?
フィギュアの得点は「技術点(TES)+演技構成点(PCS)−減点」で決まります。
坂本選手の強さは、この三要素がバランスよく高いことにあります。
① ジャンプの質と安定感
坂本選手のジャンプは、とにかく“流れ”があります。
高さと幅があり、着氷後のスピードが落ちにくい。
そのためGOE(出来栄え点)がつきやすいのが特徴です。
大きな転倒が少なく、回転不足も比較的少ない。
「大崩れしない」安定感が、トータルスコアを押し上げています。
難度をむやみに上げるよりも、成功率と完成度を重視する構成。
この戦略が結果につながっています。
② スケーティングとスピードの強さ
坂本選手は、女子選手の中でもトップクラスのスピードを誇ります。
リンクを大きく使い、エッジが深く、滑りが伸びる。
スケーティングスキル(SS)で高い評価を受ける理由です。
ジャンプの前後もスピードが落ちにくいため、
演技全体に勢いがあります。
PCS(演技構成点)の高さは、この滑りの質が土台になっています。
③ 音楽解釈とプログラムの完成度
坂本選手は、音楽に対するアプローチが明確です。
所作が統一され、プログラム全体に一体感があります。
コンポジション(構成)とプレゼンテーション(表現)の評価も安定しています。
ジャンプだけでなく「作品」として完成度が高い。
だからPCSでも強いのです。
長年支える“厳しめのママ”中野コーチ
坂本選手を語るうえで欠かせないのが、
中野園子コーチとの関係です。
4歳から指導を受け続けてきた師弟関係。
坂本選手は中野コーチを「辞書」「厳しめのママ」と表現しています。
「何が悪いか分からないときでも、聞いたら気づける存在」
技術面だけでなく、精神的な支えでもあります。
北京五輪で銅メダルが決まったとき、
中野コーチは「しっかり神様がついてみてくれたね」と声をかけました。
坂本選手は「これまで以上に先生と強いハグをしました」と語っています。
失敗は財産。
この教えが、坂本選手の“折れない心”を作ってきました。
時には口論になることもあると明かしています。
本音でぶつかれる関係だからこそ、強さが育まれてきたのでしょう。
有名な“スムージー事件”
坂本選手の人柄を象徴するエピソードとして語られるのが、いわゆる“スムージー事件”です。
2018年四大陸選手権前、体重管理のため甘いものは禁止されていました。
しかし坂本選手は、こっそりスムージーを購入。
振り返ると、そこには中野コーチ。
慌ててかばんに押し込んだものの見つかり、「優勝せえへんかったら許さへんから!」と一喝されたといいます。
翌日、坂本選手は必死に滑り、
SPで初の70点台、フリーも自己ベスト更新。見事優勝を果たしました。
この出来事は、師弟の関係性と、坂本選手の負けず嫌いな一面をよく表しています。
ミラノ五輪でも期待される理由
メダル候補として迎えたミラノ五輪シーズン。
坂本選手が評価されているのは、個人の得点力だけではありません。
団体戦では、自身が安定した演技を披露しただけでなく、リンクサイドで誰よりも明るく仲間を応援する姿が印象的でした。
演技が終わった選手を笑顔で迎え、声をかけ、チーム全体の空気を前向きに保つ存在になっていました。
個人戦が始まってからも、男子シングルやペアの試合会場に足を運び、スタンドから声援を送る様子が見られました。
自分の競技に集中するだけでなく、チーム全体を思う姿勢からは、坂本選手の仲間想いで熱い一面が伝わってきます。
こうした姿勢は、演技の完成度とは別の意味で“信頼される選手”である理由の一つでしょう。
リンクの上では迫力ある滑りで会場を魅了し、リンクの外ではチームを明るく支える。
その両面を持っているからこそ、大舞台でも自然と存在感を放つのです。
まとめ
坂本花織選手は、
・ジャンプの質と安定感
・トップレベルのスケーティング
・完成度の高いプログラム
・中野コーチとの強い信頼関係
これらを武器に、長く世界トップを維持してきました。
強さの裏には、厳しさとユーモアが同居する師弟関係と、
失敗を糧にする姿勢があります。
そして今シーズン限りでの引退を表明していることもあり、
坂本選手の試合を見られる機会は残りわずかです。
世界女王としてリンクに立つ姿を見られる時間は、決して長くはありません。
だからこそ、ミラノ五輪の舞台で悔いのない、坂本花織らしいベストの演技を見せてほしい――そう願わずにはいられません。
技術と人間味、その両方を兼ね備えた選手。
それが坂本花織選手です。



